大麻使用罪への反対

 現下情勢を賑わせております、大麻使用罪の検討会にて、結論がどうなるか21年5月22日現在で定かではありませんが、「検討会」の議事録および資料を批判的に読解した上で、私たちカンナビスト@関西は明確に反対しております。

 

(1)そもそも大前提として、「大麻問題」に典型的に見られる「ドラッグ戦争」は国際的、学問的には失敗したものと論じられており、私たちは非罰化や非犯罪化を基調とする見解の妥当性を認めてきました。

Kofi Annan: Stop 'war on drugs' - Kofi Annan Foundation

Report of the Global Commission on Drug Policy (opensocietyfoundations.org)

 

 こうした「厳罰化」を基調とする薬物政策にはもう、GCPD (Global Commission on Drug Policy)や米国NORMLなどリベラル/人権派の諸団体だけではなく、米国での「人種差別的な摘発」「大量拘禁社会の問題性」などを前提として、多くの国際機関が「厳罰化を推奨はしていない」ことが明確です。

 確かに、大麻も含まれるドラッグ類の使用は「自己へのハーム」が含まれる場合があり、これは懸念される論点ですが、それは「厳罰化と刑務所」で解決する問題ではなく、重要なことは医療と社会福祉と教育です。カンナビストは以前からずっと、大麻と「若年者のヘビーユーザーが、どの程度精神疾患と相関するのか」「自動車運転の場合はどうか」といったリスクを否定せず、その上で「厳罰化では何の問題も解決しない」としてきました。

 

(2)法的実践として運用のグレーゾーン、法規定の恣意的運用が懸念されます。

 この点はあまり、法学や政策論争として提起されていないのですが、所持なき大麻の使用罪なるものを策定する諸国はなく、日本独自の運用となることと思われます。これがどの範囲で、どの程度の証拠をもって運用されるのかは、未来の警察/法運用となるため、現時点で断定できる人は誰もいません。

 

 しかしストリート水準での非罰化を20年来ずっと訴えてきた私たちの視点からすると、この「曖昧な使用罪」の導入は、警察や入管といった規制行政のフリーハンドを増やし、処罰対象をより曖昧なものにする帰結を大変憂慮しています。

 

 具体的に言えば、厚労省監麻課は「大麻という農作物の刈り取り」に際してTHCは検出されなかったとしていますが、これは大麻の花弁が成熟する時期になされたものであるかどうかが不分明です。根拠として一義的には妥当しないというか、判断不能としか言いようがない「検出」です。

 

 また同様に、諸外国のパーティやクラブなどでしばしばみられる、「クッキングハイ」の事例は大変ありえることです。自ら喫煙はせずに不作為で知らずに、クッキーや、THC入りのクリームソースを舐めたものが、帰国時に疑われる場合、自身の無罪をどう証明すれば良いのか全く分かりません。繰り返していえば、カリフォルニアにおいてこうした事例はコカインや覚せい剤と全く異なり、社会生活において偶発的に見られるものとなっているということです。

 こうした事例を判断する場合、「過去の行動が疑わしかったから起訴」「あるいはただの偶然だろうから不起訴」と考えるのは、「社会的通念」による警察や法務行政の担当者になるのでしょうか。そうした法運用のグレーゾーンを増して、結局得られる「法的な利益」は社会的な利益ではなく、ただの「規制行政にとっての利便性」ではないのでしょうか。

 

 古くから大麻厳罰化に反対してきたものとして、明確に使用罪に反対するという記録をここに残しておきます、というお話でした。

カンナビスト@関西 cannabisty@gmail.com