カリフォルニアで11月2日に実施されるProp19の速報ですが、ここ一週間ほど世論調査の結果が目まぐるしく変わっています。
そもそも、社会調査論として「電話調査」なのか、「アンケート」なのか、あるいは「面接調査」なのか、さらには質問項目をどう組み立てるか、対象とする母集団はどのように設定するのかによって、調査結果はかなり左右されるのですが、それにしてもここ一か月の調査結果はかなり流動的です。
例えば、10月上旬に行われた調査では支持率が50%を超え、成立の見込みが高くなっていたのですが、10月21日の調査結果では、支持が44%に落ち、反対派の宣伝が功を奏したとのニュースが流されました。(情報ソース:LAタイムズhttp://www.latimes.com/news/local/la-me-1021-prop-poll-20101021,0,1066812.story)
しかし、カリフォルニアですら、一般的な「大麻」に対するイメージが良いわけではなく、若干の投票者はアンケート調査に対しては「No」と答えながら、実際の投票ではこっそりと「Yes」を書く可能性があることも、また指摘されています(http://yeson19.com/node/274)。
今回の投票は本当に微妙なラインで、蓋を開けてみるまでどちらに転ぶかは全く分かりません。とはいえ、アメリカにおいて初の全面的な個人所持合法化が成立するかもしれない、というラインにまで立てているのは、本当に時代の移り変わりを感じさせる出来事です。
すでにいくつかの州で行われているような、非犯罪化や医療大麻の合法化ではなく、個人所持の合法化です。しかし、これほど大麻規制の歴史にとって大きな出来事も、日本においてはせいぜい「面白海外ニュース」の扱いであり、実際に現地で議論されているような、(1)リベラル・保守主義の対立、(2)キリスト教右派への評価、(3)最新の医学・薬学的見解が政治的投票に直接影響を与えているという出来事、などなど、基礎的なトピックの文脈が全く報道されず、扱いも小さなことには驚きます。
これは単なる「財政難のトンデモ解決策」などといったものではなく、明白にリベラル・保守主義の対立であり、ほとんど妊娠中絶や同性愛者の結婚などと同じ文脈における、米国型のプロテスタント的保守主義とリベラリズムの間で生じている、まっとうな政治的係争なのです。そして、今回の投票が「同性婚を認めるか否か」といった文脈とは全く違ったものであり、アメリカでは奇妙奇天烈な住民投票もあるもんだなあといった観点でしか、Prop19の意義を推し量れない日本的観点は、あまりに政治的に貧困であるといわざるをえません。
このあたりの経緯については、いずれ論文等でも整理したいと思っていますが、ひとまずは簡単な速報のみにて。