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大麻合法化と節操のないビジネス・マインド

昨年からさらに米国諸州での大麻合法化や、メキシコなどのように医療用大麻の合法化が進展し、それは私たちとしてはとても歓迎すべきことです。

しかし一方で、大麻ビジネスの活況に沸くシアトルなど西海岸の諸都市において、これは純粋な単なるビジネス・チャンスとして捉え、これまでは保守的な主張を行ってきたものの、経済右派の観点から大麻合法化と商業化に賛成しはじめる有象無象も、同時に出現しています。

日本で言えば、ホリエモン三橋貴明のような人々が、大麻ビジネスに参入してそこでベンチャー企業を立ち上げて一山当てようと試みているような、そうした状況もまた、西海岸諸州の一つの現実です。

 

こうした出来事それ自体は、私としては趣味が悪い人々だとは思いますが、どうしようもない事柄ではあります。大麻ビジネスを合法化し、流通させ、課税することで州の財政を改善するのだということは、経済右派が当初から主張してきたことで、その結果として実際に大麻が、タバコやアルコールや、あるいは極端な場合によっては原子力発電ビジネスのようなものとして貨幣によって抽象化され、商品市場に流通するのであれば、その帰結がホリエモンの参入にもなるということは明白だからです。

マルクスが言った通り、貨幣に顔はなく、商品流通は抽象的で顔のない資本によって行われるのです。

 

日本においても、比較的以前から欧米の事例を取り上げて大麻合法化を求める有名人としてラジオDJのモーリー・ロバートソンがいますが、彼は同時に、原発推進のビジネスにも参入し、最近では週刊新潮における電力会社のコマーシャル特集である「新潮人物文庫 これからのエネルギー、私の視座」にも登場してきます。

先に名前を出した、いわゆる「ネット右翼」「韓国バッシング」界隈でビジネスを行ってきた三橋貴明も、モーリーに続いて登場しました。

 

彼らは「私は決して原発推進一辺倒ではないが」と言いながら、同時に「世界中には原発があって、日本でだけ原発反対を叫んでも、それは左翼の妄想にすぎない」だから「現実をみて、原発によって温室効果ガスを軽減するなど、お利口に地球環境を考えるべき」だといいます。もちろん、彼らは電力業界からお金をもらった自称中立の明白な原発推進派です。

 

こうした人々は、根底的な部分で全く無節操な、思想的足場のないビジネスマンであるか、もしくは経済右派であったり、ナショナリズムであったり、何らかの「国策としての原発」に賛同しながら、表向きは「自分は中立なのですが」と装っている場合かの、いずれかなのでしょう。

 

そうして、原発ビジネスがこれまで、地方―中央の格差を利用しながら政治的・経済的に弱い立場にある地域を食い物にしてきたことや、内部で情報隠蔽が恒常的に行われてきた非民主的なシステムの性質については、何も言及しません。

しかし一方で、彼らが「能天気で非現実的な左翼」と呼ぶ人々であるところの、ヒッピー、フリークス、ラスタたちは、そうした原発のシステムを鋭くバビロン・システムであると看破し一貫して批判してきました。No Nukes, No War, One Love.

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 そして私は、自分自身ではヒッピーでもラスタでもない、一介のリベラル左派に属する社会学者であると自己認識しながら、モーリー氏や西海岸のビジネスマンのような人々よりも、ずっとバビロン・システムを批判し続けてきた人々に親近感と敬意を感じます。

 

結局のところ、これはイデオロギーというよりは、もう少しその手前の、普遍的な原則に関する考え方の違いなのかなとも思います。

例えばE.カントのような哲学者たちが、根本的な行動や考え方の原則として「定言命法仮言命法」や「道徳律」といった概念で表現しようとした、要するに、とても日常的な言い方をするならば「嘘をついてはいけない」「人を差別してはならない」といったようなとても簡単な原則から出発して、その原則に反しない形式で高度な命題についても考えてみるとどうなるだろうか、といったような普遍的・原則的な考え方を、どう捉えるのかということです。

 

「現実には原発や戦争があるのだから、原発を止めようじゃなくて、原発を上手くコントロールして利用するのがお利口だ」というときに、果たしてそれは「難民がいるのは仕方ないし、難民救済とか偽善だからまあ上手く低賃金の末端労働者としてこき使おうぜ、そのほうが彼らも仕事を得られて結果としてWin-Winだしね」と厚顔無恥に露骨な発言を行う人々と、表面的な口の汚さ以外に一体どの程度の本質的な違いがあるというのでしょうか。

 

今後、大麻合法化/非犯罪化が進めば当然、どの地域でもこうしたビジネスマンや、「合法化は自分が儲かればOK」あるいはもう少しお利口に「フリードマンマネタリストの観点から財源とマーケットの流動性を考えて合法化OK」という言い方で、大麻ビジネスに参入する人々も増えてくるでしょう。

要するに、大麻合法化とかいいながら、原発推進も大事だからお利口に使おうぜとかいってるモーリーの議論みたいなのは、それは完全にクソだろ、ってことが言いたかっただけです。

私は少なくとも、そうした言動に対する批判精神、批評を絶やさずに、運動の潮流を記述するアカデミシャンであり続けたいと考えています。